テーマ:小説

「吾輩は犬である」、その11、最終節

十一  吾輩もこの家にきてだいぶ経つようになった。吾輩も家族の一員として迎えられたのかも知れん。あの一番邪悪な種族であった餓鬼共も吾輩がフライング・アタックをしても逆に吾輩を抱きかかえてしまうようになった。反対に餓鬼どもが吾輩にフライング・アタックを食らわすようなことは決してしなくなった。食らったら吾輩がぺっしゃんこになるぐらい巨…
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「吾輩は犬である」、その10

十  吾輩はひそかに細君の方を飼い主だと思っておる。おかげで細君からおかみさんに昇格している。なぜそう思うのかと言われてもそう思うからそうなのである。まあなんでも無理に理由を捻り出してみれば、なんといっても飯をくれる。次に犬かわいがりしてくれる。あんぽんたんは実に暴力的だ。あれはいかん。平和主義者の吾輩をなんだと思っておるのか。そ…
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「吾輩は犬である」、その9

九  いつものように午後の惰眠をむさぼってごろごろしていたら、我が祖先の遠い記憶を思い起こさせるような懐かしい音が近づいてくる。横には昼間っから寝ているあんぽんたんが居る。いや、吾輩が横に居たのだっけ。まあどちらでもいい。耳だけそばだてて聞いていると、どうもこれは仲間が騒いでいるようだ。半身、体を起こして待っていると、そこを仲間が…
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「吾輩は犬である」、その8

八  主はたいそう暇のようだ。人差し指を鼻に突っ込み、庭ともいえぬ庭の先の塀を見ながら、  「暇だ。」 と言う。  「誰も通りもせぬ。俺がガキの頃は人の家の塀などは通り道みたいなものだったぞ。今のガキは何をしているのだ。」  最近は吾輩に独り言をいうのが日課のようになっている。人間も犬に愚痴をこぼすようになると病気というも…
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「吾輩は犬である」、その7

七  吾輩今日はたっぷりと運動した。日に三度も運動しているだろうとおっしゃるお方もあろうが、あのような散歩は運動とは言い難い。都会に住む犬族は自由とは程遠い悩みごとの多いところに住んでいるのである。余りに気に病む御犬など五百円禿げがそこら中にできるほどだ。ストレスとは恐ろしい。犬とて悩むのである。  まず吾輩たちは繋がれている。…
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「吾輩は犬である」、その6

六  人間というものは実にものぐさのようだ。飯を食うと眠いと言って横になり、外から帰ってくれば疲れたといい横になり、夜は夜でテレビの前でごろごろしている。まったく動こうとしない。吾輩が散歩に連れ出してやらないと運動というものをまったくやらない。無駄なことはしないという点では犬後に落ちず毎日だらだらと寝て暮らす吾輩であるがここはひと…
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「吾輩は犬である」、その5

五  天高く馬肥ゆる秋、ましてや犬も肥えて当然。しかるに吾輩は健康に良くないと食事制限を受けておる。あばらまで見えてどこが健康的なのか一向に解せなんだが致し方ない。  あんぽんたんは何でも試してみないと気が済まない。吾輩に豆腐がよい、オカラがよいと誰ぞに言われると豆腐やオカラばかりをやたら食べさせる。犬の缶詰も野菜が多い方がいい…
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「吾輩は犬である」、その4

四  けつの穴が塞がった。  あんぽんたんは吾輩の食いっぷりを見て暇を見つけては用もないのに田舎に出張して牛骨を買ってくる。細君は吾輩のピッカピカの歯を見て歯の掃除の手間が省けると言ってショップで加工牛骨を買いまくる。そして吾輩のけつの穴は塞がった。  「昨日からうんちが出ないのよ。いつもならご飯を食べて散歩に行くとすぐ出るの…
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「吾輩は犬である」、その3

三  静ちゃんがいなくなり会える楽しみがひとつ減りはしたが、幸い人間にも犬族にも多く知己を得て退屈ということとは縁がなくて済んでいる。最近は写真のモデルに指定されることも多くなり、注文もせぬのにやたらと我が家には吾輩の写真が溜まるようになった。おやつもたくさんもらうようになったのだが、この犬のおやつというのは人間には無味無臭のよう…
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「吾輩は犬である」、その2

二  近頃この界隈では吾輩も有名になった。来る者は拒まず、争いを好まず、すべての人に愛想を振るまく生来の処世術にたけた吾輩に敵はいない。  我が主の年賀状もすっかり犬だらけだ。近頃は写真の印刷が手軽にできるので犬の写真だらけである。ところが我がご主人はあの真っ黒けっけの上に色を塗るたくった絵を送ったのである。なんという心臓だろう…
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「吾輩は犬である」、その1

一  吾輩は犬である。名前はすでにある。しかし教えてはやらん。  生まれは埼玉である。生まれる前から血統なんたらまである。吾輩は由緒正しき犬である。最初の記憶は目が見えなかったのでよくわからん。うすぼんやりした中あっちへふらふらこっちへふらふらごっつんしていると何やらいろいろな手に持ち上げられた。吾輩はここで初めて人間というもの…
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