高橋昌明 「武士の日本史」 岩波新書

 西洋の「暗黒の中世」のイメージと形式的な唯物史観などが輸入されて日本でも歴史の中に絶対的封建制がどんと座って動かない。そんな一面的な解釈がいやになってか網野など色々な人が歴史をもっと多面的に見ようとしている。この本もそんな文脈のなか武士の歴史を見なおそうとしている。
 武は芸のひとつである、から始まる。芸であり家業である。家業であるから何らかの帰属関係の中にある。力にのみ頼る武人のイメージからもかけ離れている。ひとつ話を拾ってみよう。
 中世の戦いは馬上から射かけあいだったそうな。つまり武士の表芸は馬上の射芸であって、ちゃんちゃんバラバラなど滅多にある事ではなかったようだ。しかもその馬、当時の実際の馬の大きさは現在のポニーなみ。更に馬具や馬術がいまいちだったので、弓で両手のふさがった状態では方向転換もままにならない。そこで馬の口を取って引く役の人間が必要になる。馬を駆けさせたらこの口取もいっしょに走って移動する。どう考えても速いとはおもえない。どこぞのテレビででかいサラブレッドが平地を疾駆する場面なんぞとても想像できない。わたしはドン・キホーテとサンチョを思い浮かべたが、それでもまだドン・キホーテの馬の方が圧倒的に速いだろう。
 というわけで面白いので読んでみて。


武士の日本史 (岩波新書)
岩波書店
高橋 昌明

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